ちいさな木陰 [アサノジカン]
よく花屋に入ると、いっせいにはじけるような笑い声を聞いたような錯覚を起こす。
小学校の休み時間のわんわんした音を遠くで聞いたような・・
今日の花屋には、普段の生活の中にはないまぶしいくらい明るい春色たちが勢ぞろい。
そして、やっぱり今日も話しかけられているような気がした・・。
まだ風が冷たく感じられるので、みずみずしい表情と春の生気にふわっと包まれた。
久しぶりに花を買おう、そう思うと心は弾んだ。
さて、どんな花にしよう、この時期こでまりとミモザはいいな、はなやかな色も・・
引かれたのは、店の奥まった場所に在った彼岸桜。
ごつごつした枝の重みを腕に感じながら、花屋を出た。
さっきより一段明るくみえる光の中を歩いていると、あら桜ねぇと笑ってくれた人がいて
さらに弾んだ。
ちょっとおまけに今日春を運ばせてもらえたような気がして。
覗き込むと、可憐なつぼみがふくらんでいた。
静かに。