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保健室 [記憶のトビラ]

子どもの頃、オトナになりたくないとずっと(密かに)思っていた。
きょう、そのことを思い出した。

小学校に通いはじめてまもなくの頃、
ある三年生の女子に「血が出た」と言われ、保健室まで付き添った。
あいにく保健の先生の姿は見当たらず、職員室や心当たりをあちこち探したが
しばらく経っても保健の先生は戻ってこなかった。
早く保健の先生戻ってこないかなぁ・・内心ものすごく焦っていた。

そうしたら、その女子は「じゃあ、センセイがやってよ」と当たり前のように指を差し出した。
わたしはものすごく驚いた。
そりゃ、わたしは小学生の頃、保健室の常連で毎日のように通いつめていたほど(ケガの)。
自分の血やキズはなんてことない。
しかし他人の、しかもこんなにちいさな人のケガには弱い。

内心あたふた怖気づきながらも、腹をくくって、おそるおそる細い指に消毒し、
痛いからフーフーしてと言われ、フーフーもし、こわごわ絆創膏をまいた。
その力加減の難しいことったらなかった。
細くてふにゃふにゃとやわらかいし、力もない。

でも、わたしの指先をじっとみつめ、おわりと言った途端、ありがとう、と
当たり前のことのように(何の感慨もなく)さっときびすを返して走っていった。
ち、ちゃんとやれたのかな・・
ちいさな後姿を見送りながら、ある意味そのたくましさがうらやましかった。
コッチは(情けないことに)汗びっしょりだというのに・・。
保健の先生、担任の先生、いや、親ってすごいんだな・・
つくづくと尊敬の念を抱いた出来事だった。

いやおうなく、日に日にそういう機会は増えていった。
毎回驚くことは、ちいさな人(たち)が全身をあずけてしまえる対象に
自分がいるということ、そのことが衝撃的だった。
そうか、わたしは彼らから見たら、じゅうぶんオトナに見えるもんな・・

きょう、新三年生になった女の子が真っ青な顔をしておなかがいたいと言いに来た。
教室のドアを閉めた途端、ちいさな手でわたしの手をすぐさまにぎりしめてきた。
体重をすべてあずけるようにして。
保健室までの道、全身の重みをしっかりと感じ、受け止めながら、
しっかりしなければ・・わたしはもう大きいんだから・・と自分を奮い立たせていた。

結局保健の先生にバトンタッチし、親が迎えに来ると聞き、安心した途端、
保健室に出入りできる特権を持った彼らをやっぱりうらやましいと思ってしまった。
まったくオトナ気ない。

ちいさい人との日々から教わることは、わたしにはおおきい。


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コメント 6

ニコ

ううっ(涙)おひさしぶり~。更新が嬉しい。。。
今、とても忙しいんだね。無理しない程度にがんばってね。
私の体はもう中年(?)にさしかかっているのに
こころだけ、コドモみたい。ていうかコドモだよ。
どうも、大人になっている実感がナイ。・・・らしい。
子供を産んで育てていないからだろうなぁ・・と、ふと思ったり。
先日、給食の話を友達をしていたらね
私は昔の(自分の子供時代の)話で、友達は今の(自分の子供の)話で
同じテーマを話すにも、こうも違うものかと驚いたの。
私の体の半分は(というかほとんどは・笑)思い出で出来ているらしい(笑)
by ニコ (2006-04-27 20:56) 

ちょんまげ侍金四郎

実はやんちゃ坊主だったわりに、なが~い朝礼で目の前にチカチカお星様がでてしまい、一番後ろからフラフラになって一番前の担任の所まで行って保健室いったことが・・・たしか二度ほどありました。
クーラーがあって涼しかったです(笑)

追記
さよならcolorが届きました
一言でいえば、せつない!なんとせつないラブストーりーだろうかと、ただキャストが、え!こんな所に!!と言う方が多数いて面白かったです。
それと竹中監督の実体験も入ってますよね。あの時間指定で女の子の名前を叫ぶシーンは、以前笑っていいともだったか、さんまのまんまだったかで聞いた覚えがあります(笑)
原ひさこさん、可愛いとは、この方の為にある言葉だと確信しました。。。
by ちょんまげ侍金四郎 (2006-04-29 12:59) 

ふう

大人になっていくと
経験の数が増えるからかなあ。
少しずつ、怖いものが減っていき、
そして増えていくような気もする。
でも、増えていくものは人への恐怖。
人って、怖いけど好かれたい、好きでいたいからこその
恐怖に襲われ、おののく。

でも、この前、自分の親指の付け根を
包丁でばっさりやったときには、
病院の先生や看護婦さんに
身をゆだねて神妙にお話をきいてました。
でも、2日たったら、忘れていましたが・・・
大人なんてそんなもの~
by ふう (2006-04-29 17:59) 

月うさぎ

*ニコちゃんへ*
ニコちゃん、ありがとう。
本当にうれしいメッセージだった。
かなり心身ともに追いつめられていたのでなおさら染みた(涙)。
最後の一文にドキッとした。わたしもそうだからかな。。
中学時代からのある友人に「あなたは思い出の中に生きている」と言われたことが過去にあって、ある意味すごくショックを受けたことを思い出したよ。
たしかに、わたしはくだらないことを異常に(!)よく記憶しているからな(笑)。。
by 月うさぎ (2006-05-07 00:17) 

月うさぎ

*ちょんまげ侍金四郎さんへ*
わたしのイメージに、ちょんまげ侍金四郎さんが朝礼で倒れてしまうなんてありえなかったのでびっくりしました(←たいがい失礼)!

”サヨナラcolor”、ご覧になったんですね!
なんだかうれしい。。
よくよく考えるとなんともせつないラブストーリーなんですよね。
もう一度観るとまたちがう印象になるだろうな・・などとよく思います。
そうなんです。原ひさ子さんが本当に素敵で・・ため息が出ます。
ヒトの印象があれほどやわらかく、深く刻まれることはないでしょうね。
ちょんまげ侍金四郎さんのおっしゃるとおりだと思います。
by 月うさぎ (2006-05-07 00:26) 

月うさぎ

*ふうさんへ*
ほんとにそう思います。
大人になると、経験も情報も増えるから錯覚に陥りやすい。
錯覚してしまう・・そのことに最近気づきました。
実は、ちゃんと経験していないじゃないかって。
そういうことを踏んでいなかったじゃないかって。
ときどきはっとします。

>身をゆだねて神妙にお話をきいてました。
>でも、2日たったら、忘れていましたが・・・
>大人なんてそんなもの~

ふうさん、ふうさん!
実のところ、こどもが、そんなもの~♪なのでは~?(笑)
by 月うさぎ (2006-05-07 00:32) 

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