わらう、桃 [家族]
八百屋さんの店先に、桃がきれいにならぶ頃、わたしは、そわそわしはじめる。
しかし、手は出さず・・ガマン・・ガマン。
ほどなくして、「こまつさんの桃」が、届いた。
生まれ故郷の福島から。
うちの家族はみんな、いつしか「こまつさんの桃が届いたよ～」
「こまつさんの梨～林檎～」と、「こまつさんの」をつけて、呼ぶようになった。
どれだけ引越しを繰り返しても、転勤族のわたしたち家族の元へ、
ずっと、自分の手で育てた林檎や桃を、送り続けてくれたひと。
「こまつさん」とは、生まれてくるわたしを、とりあげてくれたひとだ。
兄もわたしも、こまつさんの手のおかげで、この世に送りだされた。
福島に居たとき、家の近くで、母は親しい人にお花を教えていた。
その中に、こまつさんはいた。
母は、祖母を亡くしたばかりだし（祖母と入れ替わるようにしてわたしは生まれた）、
年恰好も雰囲気も、祖母に似かよったこまつさんを、もとから頼りにしていたところがあった。
以来、不思議な縁で、こまつさんと母は、ずっと、家族以上のつながりで結ばれている。
「女三人で旅行しましょう」
こまつさんのおもいつきで、金沢を訪れたことがある。
忘れられない、ある意味、わたしの卒業旅行のようなもの。
こまつさんが、夜通し語ってくれたこと。
母として、女として、壮絶に、必死に、生きてきたこと、
看護婦だった若い頃に出会った数々の経験からまなぶこと。
将来に夢だけを抱いていたようなわたしには、想像もできないことばかりで、かなり衝撃的だった。
それでも、今、耳を傾けずには、今、聞いておかなくては、
という、前のめりの気持ちでいっぱいだった。
おんな三人で、頭をひっつけあって、夜が明けるまで、夢中でおしゃべりした。
子どものように、声をあげて笑ったり、質問攻めにしたり、じっと聞き入ったり、
そんな風に夢中になる母の姿まで、印象的だった。
このひとに恥じない生き方を、しよう。
高校生だったわたしが、はじめて、女としての意識を持った日。
命の尊さ、
人として、女として、生きていく、だいじなことを、教えてくれたひと。
今年も、こまつさんの手が、もいでくれた桃。
目の前にならんだ桃は、みんな、うれしそうにわらっている。
桃、おいしそうですね。すっごいおいしそう＾＾
by pan-nyan (2005-08-09 21:58)
人には想像できないほどのドラマを持って生きてきた人に出会えて
その人の人生を聞く事ができるなんてすごく貴重な体験をなさってますね。
出会いに気付かないことの方が圧倒的に多いんですもの。
そんな特別な人の桃は格別に美味しいんでしょうね～
by (2005-08-10 00:20)
いい話
清々しい気持ち
いただきました
by ちょんまげ侍金四郎 (2005-08-10 09:00)
贈ってくれた人の思いも味わえる桃なんですね。
いいなぁ。
ちなみに、ぼくらも桃、大好きです。
先日、ユウがこっそり買ってきてくれてました。
by おりこうしんや (2005-08-10 11:24)
桃、最近食べてません。
出張中に桃・・・難しいな(^^;
これを見たら食べたくなりましたが、『１つ』って買えるのかな？
by (2005-08-10 12:30)
とてもいいお話ですね。
親は自分の多面性をなかなか子どもに見せないものかもしれませんが、
おととしの夏に、母が生まれてはじめて飛行機にのって遊びにきて
くれたときは、相当おもしろかったです。
浜辺で誰よりもはしゃぐ母、
ふだん財布のひもの固い人がお土産を次々に買う姿、
沖縄にきているのに、テレビで沖縄の映像を食い入るように見たり…。
母はそのとき母であること意外の面を多分に見せてくれました。
もも、おいしそう…。
果物のなかではだんとつにももが好きなのです。
by ユウ (2005-08-10 12:53)
☆ぱんにゃんさんへ☆
すっごいおいしそう、に写せて、ほっとひと安心です（笑）
ほんとにいい形、いい色の桃でした。
なので、返事は、
「はい！とってもおいしくいただきました（笑）」
by 月うさぎ (2005-08-10 13:32)
☆agehaさんへ☆
それなりに色々な人と出会ってきましたが、女性で、目上の方で
ここまで劇的な人生を生きた人は、はじめてでした。
高校生という年齢も、ちょうどあれこれと考える時期で・・。
なんてちっぽけなところでグダグダ足踏みしているんだ～！みたいな（笑）
吹っ飛ばされました。
by 月うさぎ (2005-08-10 13:41)
☆ちょんまげ侍金四郎さまへ☆
ありがとうございます。
こういう人と巡りあえたことも、今考えると、
ただの縁ではないなと感じています。
by 月うさぎ (2005-08-10 13:41)
☆IWAさんへ☆
ひとつでも買えます！
最近はスーパーでもひとつ売りみかけますが、
やはり、八百屋さんの方が、美人の桃を選べますよ～（笑）
by 月うさぎ (2005-08-10 13:48)
☆おりこうしんやさんへ☆
旬の果物は、本当に身も心も豊かにしてくれますよね。
桃はとくに、しあわせを感じませんか？
ユウさんが、こっそり買ってきてくれた桃。
冷やして、おふたり並んで食べられたんでしょうねぇ
まさに、えがおの桃ですね（笑）
by 月うさぎ (2005-08-10 13:48)
☆ユウさんへ☆
結婚して家を離れてから、ますます母自身のことを知りたいと思うようになりました。確かに、旅行など一緒にすると、イメージはがらりと変わることがありますねぇ～
母は、どこに行ってもソフトクリームを食べたがる（笑）とか。
意外と好奇心旺盛だとか。
お土産物巡りをしても全然くたびれないとか。
こういう一面をたくさん持っていることに、娘という目でしか
母を見ようとしていなかったのかもしれません。
ユウさんたちも、桃好きなんですねぇ（嬉！）
近くだったら、よろこんでおすそ分けしに行くのに。。
by 月うさぎ (2005-08-10 13:57)
私、桃って大好き。
私の生まれたところは、桃が生まれる町と書くんです。（←宮城県にあります）
うちは農家だから、今朝も、母が育てたトマトをミキサーにかけたジュースを
朝一番に飲んできました。
手作りを食べる幸せを、大人になってから知りました（遅！）
こまつさんの桃、本当に美味しそうですね(〃^▽^〃)
by ラムネ (2005-08-10 22:04)
こまつさんの桃、おいしそう～。
こまつさんからはきっと桃と一緒に
頑張るココロと優しいココロが贈られて来るんですね。
そしてこまつさんは月うさぎさんに桃を贈りながら
優しいココロを産んでるんだろうな～。
桃の匂いが香ってきそうです。
by ちい (2005-08-10 22:29)
＋＋＋
「こまつさん」を心に持つ月うさぎさんの幸せを思います。
人の出会いは数ではなくって、深さ、って思う。
ふと、自分は誰かに、こまつさんのかけらのようでも、光になっているかなぁ、
と思ったら、ちょっと、恥ずかしくなった。。
こまつさんは、たっくさんの赤ちゃんをとりあげ、多くの人と出会いを重ねた方でしょうに、
月うさぎさんたちは、特にご縁を深く感じていらっしゃるのでしょうね。
また、巡りあった素敵な方のお話きかてくださいね。
by hinata (2005-08-11 09:04)
☆ラムネさんへ☆
桃生町～？！たしか、はねこ踊りって有名じゃなかったかな？
あと、法印神楽。以前、民俗芸能を調べたことがあって、その時に知りました。
伝承文化に、とても興味があります。
子どもたちに、何かそういうことできないかたくらんでます（笑）
＞今朝も、母が育てたトマトをミキサーにかけたジュースを
朝一番に飲んできました。
まさに、こういうことがしあわせなんでしょうね～♪
なんせ、新鮮で美味しそう！カラダもよろこぶ！
ラムネさんは、おいしいものでいっぱいになって帰られたんでしょうねぇ～
by 月うさぎ (2005-08-11 10:27)
☆ちいさんへ☆
ちいさん、そうなんですよ～
ちゃんと、しっかりと、こまつさんの手で渡されている感覚になります。
こまつさんから果物が届くたび、今の自分に喝がはいりますっ！
たくさんの思いを、いつもいつも届けてもらっています。
いつか、こまつさんに、恩返しができるようになりたいです。
by 月うさぎ (2005-08-11 10:34)
☆hinataさんへ☆
hinataさんのおっしゃるとおり、
本当にわたしは人の縁に恵まれていると思います。
＞人の出会いは数ではなくって、深さ、って思う。
しみじみとそう思うようになりました。
子どものときから、器用なふりをし、でも不器用なところがあったので、
たくさん友だちを作りたいと思う一方、ひとり大切な人がいればいいや、
ひとりの人を深く知りたいと思うようなところがありました。
＞ふと、自分は誰かに、こまつさんのかけらのようでも、光になっているかなぁ
hinataさんのされていることは、充分にそういうことだと思っています。
感性の伝達というか・・その先にある目に見えないものの大切さとか
キモチを気づかせてくれる大切な役割のような。
あぁっ・・うまくいえずもどかしいです。
hinataさんがそっとあててくれる光。わたしも感じています。
by 月うさぎ (2005-08-11 11:06)